弁理士の独立開業

数ある国家資格の中でも、弁理士は独立開業のハードルが低いと言われます。

ここでは、弁理士の独立に関して知っておきたいことをまとめます。

弁理士が独立開業しやすい理由

独立開業というと、大きなリスクを取って打って出るようなイメージがありますが、弁理士に関して言えば、そこまでリスキーな選択とは言えません。

初期費用とランニングコストの低さ

まず第一に、弁理士として独立するには大きな資金は必要なく、初期投資があまりかからないことが挙げられます。

いきなり事務所を借りて、人を雇ったりするのであれば別ですが、まずは自宅で1人開業ということであれば、必要なものは以下のような程度です。

弁理士独立開業にあたって必要なもの

【必須のもの】

  • 開業届
  • 青色申告届
  • 仕事用のパソコン
  • 事務所用の銀行口座と銀行印
  • インターネット出願ソフト
    ※インターネット出願ソフト導のために必要なもの
    印鑑(印鑑登録用)
    印鑑証明書
    住民票
    電子証明書

【ほぼ必須のもの】

  • 事務所用の電話番号
  • 名刺
  • WEBサイト
  • 会計ソフト

また、ランニングコストとして必要となるのは、弁理士登録費用(月15000円)と、WEBサイト用のレンタルサーバー・ドメイン費用とくらいのものです。

もちろん広告などお金をかけたりすれば、その費用はかかってきますが営業にかかる最低限の費用は、一般的なビジネスと比較すると極めて低廉といえるでしょう。

失敗した場合でも撤退が容易

特許事務所の運営には弁理士資格という参入障壁があるため、一般ビジネスよりは競争環境は穏やかです。

とはいえ、もちろん独立開業した全員がうまく成功を収めることができるわけではありません。

あるいは、一旦は独立してみたものの、やはり自分には事務所運営は向かないと感じることもあるかもしれません。

しかし、その場合でも弁理士の場合には、廃業して企業内弁理士として働き口を見つけることは難しくはないでしょう。

弁理士はその業務の性質上、他の国家資格よりも、企業や事務所内で働く割合が多いことが特徴であり、独立でうまくいかなくてもその後の身の振り方にはあまり心配が無いと言えます。

【参考】弁理士の就業形態(2021年2月28日現在)
就業形態(人)(%)
特許事務所経営274923.7
特許事務所勤務241020.8
特許事務所共同経営6205.4
会社勤務278824.1
法律事務所勤務610.5
特許業務法人経営7856.8
特許業務法人勤務182615.8
弁護士法人経営370.3
弁護士法人勤務710.6
その他(非営利団体勤務等)1751.5
その他(派遣労働)
570.5
11579

また、廃業経験が転職に不利に働くのではないかと考える方もいますが、実際には弁理士業務が一通りでき、事務所経営の全体像も理解できる人材であるとみなされることが多く、むしろプラスに働くことが多いです。

なお、企業の知財部の求人は20代から30代に集中しており、40代以降であれば基本的には特許事務所の方が転職しやすい傾向にはあります。

独立弁理士の年収

弁理士として独立開業したした場合の年収は、1年目は概ね500万円程度、2年目以降は1000万を超える人もでてくるようです。

個人事務所の場合、1500万円~2000万円程度が限界ともいわれており、それ以上の年収を狙うには人を雇って事務所規模を拡大する必要があるでしょう。

なお、勤務弁理士も含めた年収の平均が700万円程度、特許事務所に勤務する弁理士の年収の最多分布帯が800万~1200万円程度となっています。

よって、弁理士の場合、大規模事務所を運営しない限り、独立した場合と勤務の場合の年収がそこまで大きく変わらない傾向があると言えます。

リスクを取って独立してもそこまで旨味が無いとも取れますが、裏を返せば前述したように、弁理士の雇用マーケットが安定していることの証でもあります。

金銭的な面では、弁理士の独立はミドルリスク・ミドルリターンの選択と言えるかもしれません。

独立弁理士の難しさ

ここまでは、主に弁理士として独立するメリットを解説してきましたが、独立開業には当然デメリットや難しさもあります。

最も大きな問題は、個人の事務所がクライアントを獲得する難しさです。

特許出願の大半をしめる大企業が個人事務所に依頼を出すことはほとんどなく、多くの大企業知財部では弁理士が2人以上いることを求めてきます。

また、たいていの知財部にはすでに、付き合いのある特許事務所が存在しており、そこに食い込むことはかなりの難行です。

結果的に中小企業や個人の依頼を中心に受託することになりますが、単発の仕事であることも多く、なかなか事務所運営を安定軌道に乗せることは難しいものです。

また、独立した場合には営業活動だけではなく、事務所運営に関わるあらゆり事務・雑務もすべて一人でこなす必要もあります。

まとめ

弁理士として独立すること自体は決して難しいことではありません。

ただし、大きな金銭的なメリットを得るには、かなりの営業力と運が必要なことも事実です。

とはいえ、独立開業して一国一城の主となり、自由に仕事をすることの充実感は何者にも代えがたいものでもあります。

このあたりは、まさに個人の価値観次第、ということになりそうです。